看護を中心に医療・保健・介護福祉の発展を支え続ける専門出版社

書籍

ひかりの足跡 第1版

 

ひかりの足跡 第1版

ハンセン病・精神障害とわが師 わが友

著:大谷藤郎

A5判/532頁/定価4,950円(本体4,500円+税10%)
ISBN:978-4-8392-1290-2
第1版/2009年 08月


●説明
本書で伝えたいこと―師・友と共に切り開いた道

 著者である大谷藤郎氏が、この書をまとめるに至った動機を、「本書に書いたのは、私の思想形成に直接影響をもたらした人々の足跡であり、また、それらの人々への私の感謝の気持ちです」と書いており、氏が18歳から出会った多くの師、そして友のもつ思想の力とその魅力がつづられているのが本書である。
 しかし、氏は元厚生省医務局長であり、戦後厚生行政のリーダーを果たしてきた存在であることからして、師や友との交流で得た思想の深まりは、単に大谷氏の内的世界にとどまらず、我が国の進路とも大きなつながりをもつのは必然である。
 事実氏は、ハンセン病、精神障害、障害児・者、難病にかかわる行政の場で、さまざまな難問と対峙するという厳しい時間のなかに生きてきた。そんな過程には、下記のような皆さんのあまり知らない多くの事実との出会いがあり、それらは氏の思想形成だけでなく、わが国の厚生行政に大きな足跡となっている。

本書からは、こんな事実を知ることができます

●「らい予防法」の廃止に至る道のりを
●「らい予防法」のもたらした差別と悲劇の歴史
●「らい予防法」下の患者さんの悲惨な生を
患者の強制隔離という過ちに国と医学界がどう関与したのか
●らいの本質を訴え続けた医師 小笠原 登を
●小笠原 登を師と仰ぎ、「らい予防法」の廃止に奔走した大谷藤郎を
●大谷を支え、共に闘った多くの患者さんと家族の存在を
社会医学の先駆者たちの残した輝かしい足跡を
福祉の世界に光をともしたパイオニアたちのことを
●戦後日本の医療界のリーダーたちの素顔を
●病むこころとからだから生み出された薫り高い芸術のことを


推薦のことば


 本書は元厚生省医務局長の大谷藤郎氏が、「らい予防法」が廃止されるまでの半世紀にわたり師友に学び闘い続けた生涯を、癌を病む病床で自己を裸にして書き下ろされた作品です。格別の感動をもって私は読みました。
        
聖路加国際病院理事長 日野原 重明


《著》
大谷 藤郎
●目次
本書の構成―師、友と出会い、学び得たこと

第一章 ハンセン病・国家権力と闘ったわが師、わが友
第二章 社会医学の遥かな道―私が見た先駆者たちの足跡
第三章 人間を見よ―こころを病むとは何か
第四章 黙々生きる障害児・者こそ「世の光」だ
      ―重症心身障害者、筋ジストロフィー、難病
第五章 漂流か、夢見ただけか―戦後日本の医学・医療の流れの中で
第六章 わが友ハンセン病・戦中派四人組は叫ぶ
第七章 歩もうとした道―私の社会観・人生論
●その他
大谷藤郎 略歴
 1924(大正13)年、滋賀県に生まれる
 1952(昭和27)年、京都大学医学部卒業。地方勤務の後、1959(昭和27)年、厚生省(現厚生労働省)入省。在職中は、精神障害、ハンセン病、結核、インターン紛争、コメディカル制度、国民健康づくり、老人保健、医療法改正、国際保健などに携わる。公衆衛生局長、医務局長を歴任。
 1983(昭和58)年の退官後は、公衆衛生審議会会長、日本医師会医療政策会議委員、厚生省医療関係者審議会委員、内閣青少年問題審議会委員等を、また財団法人藤楓協会理事長、長寿科学振興財団理事長、高松宮記念ハンセン病資料館長、国際医療福祉大学総長などを歴任した。現在、予防医学事業中央会理事長、フランスベッド・メディカルホームケア研究・助成財団会長、国際医療福祉大学名誉顧問、国立ハンセン病資料館名誉館長。
 「らい予防法」の廃止に努めるなど、ハンセン病患者や精神障害者の人権回復に尽力し、1993(平成5)年、公衆衛生のノーベル賞といわれるレオン・ベルナール賞を受賞、また1995(平成7)年に「全家連」感謝状、1996(平成8)年に「全患協」感謝状、1997(平成9)年安田・阪本賞、2001年(平成13)年にヒューマン大賞、2007(平成19)年に東弁人権賞などを受ける。
 著書は、『地域精神衛生生活指導』『現代のスティグマ』『らい予防廃止の歴史』『医の倫理と人権』など多数。