雑誌
『月刊雑誌』2018年9月号
Vol.64 No10 通巻936号
看護技術2018年9月号
“ とりあえず…… ” はもうやめよう!!
誤嚥性肺炎の多面的食支援・栄養ケア
編集協力/前田圭介(愛知医科大学 緩和ケアセンター・栄養治療支援センター 講師)
人生最後の食支援を問う
「お食い締め」―死から生まれるもの
執筆/牧野日和(愛知学院大学 心身科学部 健康科学科 講師/言語聴覚士)
B5判/96頁/定価1,320円(本体1,200円+税10%)
401090
- ●説明
第1特集
◆“ とりあえず…… ” はもうやめよう!!
誤嚥性肺炎の多面的食支援・栄養ケア
編集協力/前田圭介(愛知医科大学 緩和ケアセンター・栄養治療支援センター 講師)
肺炎の発症者,死亡者は年々増加している.その多くは高齢者であり,高齢者肺炎のなかで誤嚥性肺炎が占める割合は大きい.誤嚥性肺炎で,もしくはその疑いで入院してきた高齢者に対しては,“とりあえず禁食” “とりあえず安静” といった対応が
なされることも多く,それによって入院高齢者の身体機能,ADLは著しく低下する.そして,肺炎が治癒し退院しても入院前のADLを取り戻すことはできず,生活の変化を強いられることでQOLの低下を招く.このような状況から近年では,誤嚥性肺炎の高齢患者に対し “とりあえず……” で治療やケアを行うのではなく,その患者のQOLを考慮し,全人的な,多面的な評価と支援を行っていくことが重要視されている.
本特集では,最近の誤嚥性肺炎の治療・ケアの考え方や,多面的な評価・支援の方法を紹介するとともに,胃瘻の導入や経口摂取継続に関する倫理的問題とその支援の実際について,様々な立場から解説する.
第2特集
◆人生最後の食支援を問う
「お食い締め」―死から生まれるもの
執筆/牧野日和(愛知学院大学 心身科学部 健康科学科 講師/言語聴覚士)
食べられないことで苦しんでいた患者が再び食べられるようになったとき,患者や家族は涙を浮かべ,また苦境を共に歩んだ支援者も魂が揺さぶられるような感動を覚える.しかし看取り期における食支援においては,単に食べることだけに気をとられていてはいけない.なぜなら,命の最後には食べられないほうが自然だからである.【最期まで口から食べる】という合言葉は,どのような患者に対しても最期まで食べさせなくてはいけないといった誤解を生じさせる可能性がある.看取り期には,食べられない患者もいる.最期まで食思を示す患者でも,本当は食べたくないのにもかかわらず,家族のため,支援者のために努力して食べてみせる人がいる.これも看取り期のあり方の一つで,他者のために食べたいという患者の意思を尊重する考えもあるだろう.しかし,不適切な食支援が原因で呼吸困難などに苦しむ最期は避けなくてはいけない.
看取り期は,機能を取り戻す「治療」や「リハビリテーション」の時期とは異なり,限られた余生を癒されながら過ごす時期である.看取り期の支援は心身の苦しみを伴わない楽しむ範囲の,無理をしない支援が基本である.患者が周囲に合わせて努力するのではなく,周囲が患者のリズムに合わせる.この時期の食支援は,まるであめ細工を扱う職人のように慎重に進める.そのためには,高度な専門知識や技術に裏付けられた見極め,的を射た支援法の選定や展開,有事の際に速やかに対応できる環境整備が欠かせない.
本特集では,看取り期の食支援のあり方を事例を交えて解説していく.
- ●目次
第1特集
◆“ とりあえず…… ” はもうやめよう!!
誤嚥性肺炎の多面的食支援・栄養ケア
●Part1 高齢者肺炎治療とケアの新しい考え方
前田圭介
●Part2 高齢者肺炎を理解する:誤嚥・肺炎リスク・サルコペニア
前田圭介
●Part3 誤嚥性肺炎を繰り返す高齢者のアセスメント
永野彩乃
●Part4 高齢者のQOLを重視した誤嚥性肺炎予防のケア
@口腔ケア・義歯
藤本篤士
A栄養管理
上島順子
B食事場面:食事環境を整え,食べたい希望をつなげる
竹市美加
●Part5 高齢者のQOLを維持するための誤嚥性肺炎発症時のケア
@苦痛の緩和(発熱,呼吸困難感,口渇)
大城清貴
A経口摂取の再開・継続の判断と支援
加藤節子
●Part6 事例で考える 高齢者肺炎に関する意思決定支援:
胃瘻をつくるか,経口摂取は継続するか
@消化器内科医の立場から
西山順博
A総合診療科医の立場から
花本明子・他
Bリハビリテーション医の立場から
高畠英昭
第2特集
◆人生最後の食支援を問う
「お食い締め」―死から生まれるもの
執筆/牧野日和
連 載
◆意外に知られていない高齢者の事故
●本当は怖い“車いす”の話
樋浦裕里
◆臨床現場の“気になる家族”を効果的に支援しよう!!
●食事や治療にこだわりの強い終末期がん患者の家族
矢野順子
◆アウトブレイク事例から学ぶ感染予防対策
●消毒薬のピットフォール@
終息までに時間を要したNICUにおける緑膿菌アウトブレイク事例の苦い経験
崎浜智子
◆看護師の語りから見いだす 看取りのエッセンス
●娘を気づかう母親として病いとともに生きる患者を支えた看取り
丹生淳子
◆認定看護分野Q&A
●認知症看護編
梅原里実
●摂食・嚥下障害看護編
森本葉子
●緩和ケア編
松本啓子
- ●その他
- 【次号予告】
2018年10月号,10月臨時増刊号は2018年9月20日発売!
『看護技術』2018年10月号
第1特集
◆意図せず行われている5つの抑制
認知症患者への「抑制ゼロ」に向けて
編集協力/習田明裕(首都大学東京健康福祉学部 教授)
認知症患者のケアの現場において,身体拘束に限らず薬剤や何気ない言葉,カメラやセンサーの使用などにより意図せずに生じ得る抑制の諸特徴を整理し,抑制に陥らないためのケアの在り方や倫理的課題について事例を交えながら紹介する.
第2特集
◆あなたのリテラシーは大丈夫!?
看護師が押さえておきたい患者の個人情報の取り扱い
編集協力/品川佳満(大分県立看護科学大学看護学部 准教授)
患者の心身にかかわる個人情報の取り扱いと共有,管理の現状を概観し,看護師に求められる個人情報の取り扱いについて,起こりがちな事故のパターンと気をつけるべきポイントを整理する.
『看護技術』2018年10月臨時増刊号
特 集
◆早期から始める心不全のトータルケア
長期の療養を支え,最期までQOLを維持するための看護
2018年の診療報酬改定により,緩和ケアの適応疾患に末期心不全が加わった.増悪と寛解を繰り返しながら長期間かけて状態が悪化していく心不全の患者に対しては,治療を継続することそのものが緩和ケアとなることもあるため,早期から苦痛緩和や看取りを見据えた支援を含むトータルなケアが必要とされる.
本増刊号では,心不全のトータルケアを行うために必要な,心不全治療や症状緩和,意思決定支援などの考え方や知識と,状況の異なる様々な患者へのケアの実践例を紹介する.
2018年4月臨時増刊号 好評発売中!!
特集 医科歯科連携で取り組むオーラルマネジメント
一歩進んだケア技術と効果的な連携のポイント
2017年10月臨時増刊号 好評発売中!!
特集 退院後の生活を見据えた高齢者ケア
包括的アセスメントと健康障害へのアプローチ
2017年4月臨時増刊号 好評発売中!!
特集 訪問看護における リスクマネジメント
療養者・家族・医療者の安全をどう確保するか
看護管理者・看護教育者のための総合誌「看護展望」も好評発売中!!